This guest post, by our colleagues at J-Stage, Japan, is also available in English.
近年、出版国が日本の刊行物のDOAJへの収録誌数は、コンスタントに増加し、2020年4月に33誌であった収録誌は、2022年2月時点で、64誌となっている。J-STAGEによるDOAJへの登録支援活動の結果、収載されたジャーナルも多数含まれている。
J-STAGEとは、国立研究開発法人科学技術振興機構 (JST) が運営する電子ジャーナルプラットフォームである。日本から発表される科学技術（人文科学・社会科学を含む）情報の迅速な流通と国際情報発信力の強化、オープンアクセス（以降OA）の推進を目指し、学協会や研究機関等における科学技術刊行物の発行を支援している。現在、国内の1,800を超える発行機関による3,400誌以上のジャーナルや会議録等の刊行物を無償または低コストかつ迅速に公開している。
JSTでは2017年より、登載誌の質を向上し国際情報発信力を強化することを目的として、学術出版を専門とするコンサルタントによるジャーナル改善支援「ジャーナルコンサルティング」を実施している。2017年から2019年までは年間数誌に対し、ジャーナルの個別事情を踏まえたコンサルティング（ジャーナルのOA化支援、出版方針の刷新、編集委員会の国際化や投稿数の増加など国際発信力の強化など）を実施していた。
J-STAGEではジャーナルのOA化を推進していることから、2020年は高品質な査読付きOAジャーナルのリストとして国際的に認知されているDOAJへの収載をコンサルティング参加誌の統一目標に定めて、コンサルティングを実施した。実際にコンサルティングを担当したのはJSTが委託したオーストラリア メルボルンを拠点とするコンサルティング会社INLEXIO。彼らは質問票、分析、評価を含む独自のシステムを用いて参加誌の診断を行い、DOAJ収載基準に適合するために取り組むべき課題を洗い出した。その結果、多くの日本のジャーナルは共通して投稿規程等のドキュメント類の改善や二次利用条件の明確化、Webサイトの充実など、ジャーナルの基盤となる部分の整備が必要であることが明らかとなった。対象のうち英文誌はINLEXIOが編集長や理事らとの個別のやりとりやウェビナー等を通じて、基盤の改善を進めた。一方、和文誌はJSTがINLEXIOのシステム、ノウハウを参考に対応した。これらのコンサルティングを通じて、DOAJ収載の要件を満たしたと判断されたジャーナルについては、JSTがその申請を代行した。申請代行は、要件の詳細やフォーム入力に関する不明点を都度DOAJ事務局に問い合わせて解消しながら進めることができた。この結果、ジャーナルコンサルティングを通じてDOAJに収載されたジャーナルは2022年2月時点で18誌を数える。
また、J-STAGEでは「インターネット上に論文等を無料公開し、二次的利用の範囲に関するライセンス情報を明記することで、誰もが障壁なくアクセスできること」を「オープンアクセス」と定義しているが、J-STAGE登載誌をはじめ日本では、単純に無料でアクセスできるフリーアクセスとOAが混同されている状況が見受けられる。そのため、これまでのジャーナルコンサルティングやDOAJ申請代行を通じて得られたジャーナルの質向上に関する基礎的な知識やノウハウを広くJ-STAGE登載誌と共有･還元しようという取り組みとしてジャーナルコンサルティングミニセミナーを年4回開催している。セミナーではOAの概要・メリットやCreative Commons (CC)ライセンスの説明や設定時の留意点等の解説、DOAJ申請に向けたポイントなどを幅広く紹介し、コンサルティングに参加できないジャーナルに対してもOA化、DOAJ収載に向けた知識の底上げや意識の醸成を図る狙いがある。
2021年のジャーナルコンサルティングでは、参加ジャーナルの改善状況に沿った多様な支援（財務分析を伴うOA誌転換、データポリシーの評価、JIF取得要件･PMC収載要件への準拠、編集委員会の国際化、投稿数の増加など）を提供しているが、OA誌やコンサルティングを通じてOA化を達成したジャーナルについてはDOAJ収載支援を継続する。
今後もDOAJと連携を図りつつ国内発行刊行物の収載数を増やしていくことができればと考えている。
※J-STAGE Webサイト
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja
※オープンアクセス関連資料（日本語ページのみ）
https://www.jstage.jst.go.jp/static/pages/InformationForSocieties/TAB5/-char/ja
